正直に言うと、この研修をやると決めたとき、私の中ではまだ腹落ちしていませんでした。

今、目の前にあるのは未来の課題です。組織としてどう進むのか、誰に何を託し、どうバトンを渡していくのか。考えるべきことは山ほどありました。 それなのに、なぜ「過去」なのか。なぜ、歴史を扱う必要があるのか。その違和感を抱えたまま、私は「歴史研修」を実施する立場に立つことになりました。

過去をなぞるだけにはしたくない

準備を進める中で、過去を振り返ること自体が目的になってはいけない、ということだけは強く意識していました。 年表をなぞるだけの時間にはしたくありませんでした。功績を称えるだけの場にもしたくありませんでした。「大事だから知っておいてほしい」という押し付けにもしたくなかったのです。 だからこそ、実際にその時代を生き、判断し、動いてきた先輩たちの話を、直接聞く形を選びました。

大企業を疑似体験する場所

その中で、今でも忘れられない言葉があります。 「この活動は、大企業を疑似体験できる場所なんだ」

最初は、その意味がすぐには分かりませんでした。けれど話を聞くうちに、少しずつ腑に落ちてきました。 役割があり、立場があり、自分一人では決められないことがあります。誰かの判断が、別の誰かの行動に影響し、その積み重ねで、組織は前にも後ろにも進んでいきます。 しかもそれを、期限付きで、責任付きで、逃げ場のない状態で引き受ける。

それは確かに、会社という組織の中で起きていることと、よく似ていました。

私はこれまで、一人ではできないことを、どうすれば「みんなの力」で前に進められるのか、その問いと何度も向き合ってきました。 自分がどう考え、どう動けば、人は力を貸してくれるのか。どこまで任せ、どこで判断を引き取るのか。その感覚は、こうした組織的な活動の中で、少しずつ身についてきたものだと思っています。

歴史研修を終えた今も、あの判断が本当に正解だったのかは、正直まだ分かりません。 ただ一つ言えるのは、「この組織に、なぜ自分は関わっているのか」。その問いを、自分の言葉で考えていい空気は、確かに残ったということです。