「私は難しい理屈はわからない。でも、みんなが楽しく笑って成長できる場所を作りたいの。もっと、みんなに選ばれる組織にしたいんだわ!」
専務という役割を引き受けて最初に取り組んだのは、新リーダーが思い描く「理想の世界」を徹底的にヒアリングすることでした。
彼女が口にしたのは、とてもシンプルな言葉です。
「とにかく楽しくやりたい。それで、参加率を上げたい」
以前の私なら「『楽しい』の定義が曖昧だ」と反論していたかもしれません。しかし、今回は彼女の言葉を「因数分解」することから始めました。

見えてきた、3つの「本質」
「あなたが言う『楽しい』って、具体的にどういう状態?」
「参加率を上げたいのは、その先に何があるから?」
対話を重ね、彼女の想いを紐解いていくうちに、私は衝撃を受けました。
彼女が本能的に語るワクワクの正体は、私がこれまで「正論」として振りかざしていた組織の本質そのものだったからです。
- 「得意を足し合えば、世の中は丸くなる」
→ 組織における多様性と相互補完の重要性。 - 「人から学ぶことが、自社のヒントになる」
→ 個人の成長が、自社の発展に直結するという確信。 - 「選ばれる組織(高い参加率)を作りたい」
→ 顧客から選ばれる価値を生み出す、リーダーシップの証明。
彼女は専門用語を知らなくても、本質を「手触りのある言葉」ですでに掴んでいました。
「正論」を捨て、「翻訳」を始める
「あなたが言っていること、実は規約に全部書いてあるよ。めちゃくちゃ本質的だよ!」
そう伝えた時の、彼女の嬉しそうな顔。
私はこの時、自分の「野望」を確かな戦略へと変えました。

「彼女の感性(Feeling)を、私がシステム(Logic)に翻訳しよう」
私が前に立って指示を出すのではなく、彼女の願いを実現するために、私の持てるすべての手法(手の数)を注ぎ込む。
難しい言葉としての「理念」を一度封印し、誰もが気づかぬうちに理想の方向に動いてしまう「ステルス実装」。その幕が開いた瞬間でした。
「想い」があるから「仕組み」が活きる
これは、会社経営でも全く同じことが言えます。
社長の「こうしたい!」という直感的なエネルギーは、組織を動かす最大のエンジンです。しかし、その想いが「仕組み」に翻訳されないままだと、現場は「何をすればいいかわからない」と混乱してしまいます。
逆に、仕組みだけがあっても、そこに「想い」という血が通っていなければ、組織は冷たく硬直してしまいます。
リーダーの感性と、軍師の論理。
この二つが重なったとき、組織はかつてないスピードで動き始めます。次回は、いよいよ具体的な「仕組み」のお話です。
難解な組織図を、誰もが一瞬で理解できる「ある形」に翻訳した、第3回【人体図編】をお届けします。