※このコラムは、経営がうまくいっている話ではありません。「このままでいいのか」と感じていた頃の、ひとつの判断の記録です。

起業してからしばらく、私は「経営者」と胸を張って言える状態ではありませんでした。 仕事はしている。でも、それは生活の中心ではなく、どこか「片手間」の延長にありました。ホームページ制作の仕事も、親戚や知り合い、地域のつながりから少しずついただく程度。

それでも一件一件は真剣で、手を抜いていたつもりはありません。ただ、「このやり方で、私はどこに向かっているんだろう」。そんな違和感は、ずっと心のどこかにありました。

金額を見て、手が止まった

転機になったのは、地元の比較的大きな企業から、ホームページ制作の相談をいただいたときです。 見積を出そうとして、手が止まりました。金額が、それまで自分が受けてきた仕事の感覚を、はるかに超えていたからです。

技術的には、できる。でも、その仕事を「片手間の延長」で受けていいのか。 そのとき初めて、自分が“仕事の規模”ではなく“仕事への向き合い方”をごまかしてきたことに気づきました。 ちゃんと、やらなければいけない。ちゃんと、商売として向き合わなければいけない。

自信がないから、飛び込む

そう思ったとき、頭に浮かんだのが「環境を変える」という選択でした。 実はその少し前から、ある経営者団体への誘いを何度か受けていました。断り続けていた理由は、とても単純です。自分自身のことを、あまりにも小さく感じていたから。

そこには、立派な会社の社長や、何年も商売を続けている人たちがいる。私は、起業したばかり。生活も安定していない自分が、入っていい場所だとは思えませんでした。正直に言えば、怖かったのだと思います。

それでも、「ちゃんと一人前の商売人にならないかん」。 そう腹をくくったタイミングで、もう一度その誘いを受けました。

今度は、「仕事をもらえるから」でも「人脈が広がるから」でもありませんでした。修行の場が、必要だと思ったからです。 分からないことだらけで、場違いだと感じる場所に身を置かない限り、自分はこのままだろう、と。

違和感が、成長の合図

入会を決めたとき、自信はまったくありませんでした。ただ、「このままではダメだ」という感覚だけは、はっきりしていました。今振り返って思うのは、私は自信があったから環境を変えたのではなく、自信がなかったから、変えるしかなかったのだということです。 経営者として成長するタイミングは、「うまくいっているとき」よりも、「このままではおかしい」と感じたときに訪れる。そんな実感だけが、今も自分の中に残っています。