かなり昔は、理念やビジョンは経営者が掲げるものだと考えていました。
会社としてどこに向かうのか、何を大切にするのかを示すための言葉。理念を考えるのは経営者の仕事で、社員はそれを理解してくれればいい。
どこかで、そんな認識を持っていたのだと思います。

現場で起きていることを見て、違和感が出てきた

しかし、実際の現場を見ていると、少しずつ違和感が積み重なっていきました。理念やビジョンがある組織だったとしても、それが社員(会員)の言葉になっていない。聞かれたら答えられるけれど、自分ごととして語られてはいない。
そういう状態では、理念はあっても、理念がないのと変わりません。

理念が届いていない会社で起きること

理念やビジョンが共感まで浸透していない場合、社員が会社に求めるものは、とてもシンプルになります。
給料はいくらか、職場の雰囲気はどうか、一緒に働く人はいい人か。
その判断自体は悪いことではありません。しかし、その価値観だけで会社を選ぶ状態では、一日の多くの時間を費やす「働くこと」に誇りを持つことは難しいでしょう。

■ 誇りを持てないと、何が起きるか

誇りを持てない仕事は、条件で比較されます。給料が少し高い会社があれば、そちらに気持ちが揺れます。人間関係が変われば、一気に居場所がなくなります。
結果として、離職率は下がらず、属人的な関係に組織が引っ張られていきます。

気づいたのは、理念の役割だった

理念やビジョンは、経営者が自分を鼓舞するための言葉ではない。
社員が「なぜこの会社で働いているのか」を、自分の言葉で説明できるようにするためのもの。
理念は、経営者のためではなく、社員のための装置・基盤だと確信しました。

経営の視点が変わった瞬間

そう考えたとき、理念やビジョンの位置づけが大きく変わりました。きれいな言葉を作ることでも、掲げることでもありません。
社員が会社との関係性を理解し、誇りを持てる状態をつくるための、経営の仕組みです。その視点に立ったとき、理念やビジョンは「あるといいもの」ではなく、「ないと困るもの」に変わりました。